キャスカフェ(辻堂)|キャスキッドソンの世界観とイギリス料理を味わえた特別な場所

藤沢

今はなき“キャスカフェ”という心地よい空間

辻堂にあった「キャスカフェ(CATH’S CAFE)」—— もうすでに閉店してしまいましたが、今でも心に残る印象深いカフェです。 店内はキャスキッドソンらしい花柄のデザインに包まれ、 まるでロンドンの街角にあるティールームのような雰囲気でした。 私はよく、軽い食事やアフタヌーンティーを楽しむために訪れていました。

珍しい“イギリス料理”を味わえるカフェ

キャスカフェの大きな特徴は、イギリス料理を中心にしたメニュー構成。 ロシア料理やスイス料理、スカンジナビア料理は時折見かけますが、 イギリス料理を前面に出したカフェは日本では本当に珍しい存在でした。 アフタヌーンティーやスコーン、フィッシュ&チップス、 そして大航海時代にインドの影響を受けたケジャリーやカレーなど、 伝統と異国文化が交じり合う英国料理を、カジュアルに味わえる貴重なお店でした。

“イギリス料理は美味しくない”という誤解

「イギリス料理は美味しくない」というイメージを持つ人は少なくありません。 確かに、映画の中でもイギリスは豊かな野菜や食文化の国という印象はあまりありませんね。 でも、キャスカフェで出会った料理には、 “素材の味を大切にする素朴さ”と“家庭の温かさ”がありました。 ケジャリーにしても、カレー風味のライスにゆで卵と魚が添えられ、 一見シンプルですが、どこか懐かしく心が落ち着く味わいでした。

ドラマ「ダウントン・アビー」と重なる英国の食卓

イギリス料理を語るとき、私はよくドラマ『ダウントン・アビー』を思い出します。 料理長のパットモアさんが、上流階級の朝食にケジャリーを作るシーン。 それは決して豪華ではないけれど、どこか品があって、 伝統を大切にするイギリスらしさが感じられます。 キャスカフェで食べたケジャリーにも、そんな英国の香りが漂っていました。

“煮すぎる”文化と、奥ゆかしい味わい

イギリス料理が評判を落とした一因として、 「何でも煮込みすぎる」という文化的背景があるとよく言われます。 しかしそれも、気候や保存環境を考えれば理にかなった知恵。 味を追求するよりも、家族が温かい食卓を囲むことを大切にしてきた国なのです。 キャスカフェは、そんな“イギリスの家庭の温もり”を、日本で感じられる場所でした。

閉店しても残る、記憶の中の英国時間

キャスカフェはもうありませんが、 紅茶の香り、花柄のカップ、ゆったりと流れる午後の時間—— あの穏やかで上品なひとときは、今でも私の中に鮮やかに残っています。 イギリスの文化や料理に興味を持つきっかけをくれた場所。 そんな思い出のカフェが辻堂にあったことを、今でも懐かしく思い出します。